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研究員の呟き

研究員の呟き

なぜ専門外の学者が、安全保障法制に反対するのか?2015/08/09  読むための所要時間:約 3分58秒

gakusya

安全保障法制が衆議院を通過し、今後の議論がどうなるにしても法制化の可能性が高くなった。同時に、反対意見を持つ人々の抗議活動もヒートアップしている。

反対意見を示す人々の中には、学者・研究者が相当数いる。「安全保障関連法案に反対する学者の会」は、その象徴的存在だろう。

「学者の会」の賛同者リストを見ると、安全保障はもとより国際政治や憲法といった直接的な関連分野ではなく、むしろ自然科学系や人文社会系といった分野を専門とする学者が多い。このため「(学者と言っても)安保法制と関係ない」という批判にもつながっている。

それにしても、わざわざ「学者の会」を立ち上げたり、署名を行ったりと、なぜ自分の専門分野と関係ないにも関わらず、学者は反対するのだろうか?

「学者はバカだから」や、「現実を知らない空理空論だけだから」といった批判も聞かれるが、だとしても実名を晒して積極的に反対に賛意を示す理由の説明にはならない。

それではなぜなのか。
今回はこれを、学者・研究者の特性から解説してみたい。

先に結論を言ってしまえば、それは学者というものが「手続きを重視する特性を持つ」ためだ。定められた正しいやり方で検証を行い、仮説の正しさを証明し、そして証明されたものをもって他者の説得を行うというのが、研究の王道である。

この「定められた正しいやり方」というものは、研究分野によって様々にある。しかしどのような研究分野であっても、「検証して証明する」という過程を経ていないものは、どんなに直感的に正しそうな結論であっても、学術的価値はない。

証明できないもの、証明されていないもの、つまり正しい手続きを経ていないものは、どんなにそれが魅力的でも、正しいとは言えないのだ。

つまり学者の持つ感覚は、こういう風に言えるだろう。
物事の正しさというものは、手続きの正しさにこそ真髄がある、と。

手続きの正しさを重視する感覚は、専門分野を問わず学者・研究者の持つ特性である。なぜなら、それこそが研究を研究足らしめるためである。研究によって示されるある主張(事実)は、必ず正しい手続きによって検証され、証明されている。その一連の過程を含めて研究は価値を持つのだ。

だから、例えばやってもいない実験をやったかのように装ったり、データや資料をねつ造したりする行為(研究不正と呼ばれる)を、学者は嫌う。

安全保障法制は、その必要性に賛同するかどうかということは学者を含めた個々人の思想や考えによって異なるだろう。たとえば学者による反対意見表明に先鞭をつけた格好となった憲法学者の一部もそうだが、憲法改正を含めて何らかの形で安全保障体制の整備に賛同しながら「学者の会」に署名する学者も多い。

学者から見ると、安全保障法制における一連の与党のやり方は、違憲とされてきた集団的自衛権を無理やり合憲と認めたり、あるいは選挙で正面から賛否を問うていなかったり(衆院選では意図的に言及を避けていた)、正しい手続きを経ていないのだ。

安全保障法制をやるなら正しいやり方でやれ

俗に左翼と言われる思想的な反対者も混在しているので分かり辛いのは事実だが、今回の安全保障法制に対し、分野を越えた多くの学者が主張しているのはこういうことだろう。

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執筆担当:研究員A
<プロフィール>都内某大学研究所所属の研究員。国際政治研究を専門としていますが、最近はISの動向を中心にテロ情報を眺める毎日。情報を集めながら論文にはならないネタを色々とつぶやいていきます。更新は不定期なので、何か関心事を問い合わせ頂ければ次回投稿にしてみますのでお待ちしてます。

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