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研究員の呟き

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安全保障法制の定義する各事態とその発想2015/05/16  読むための所要時間:約 5分38秒

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2015年5月14日、安全保障法制の関連法案が閣議決定された。

安保法制の内容は、改正する10法案(自衛隊法改正案、重要影響事態法案、船舶検査活動法改正案、国連平和維持活動協力法案など)をまとめた「平和安全法制整備法案」と、新たに制定される「国際平和支援法案」だ。

複数の法案の改正、新設で何が何だかわからないというのが率直な状況だ。特に存立危機事態・重要影響事態・国際平和共同対処事態と、多くの事態が新たに定義されたものの違いがよくわからない。もともと武力攻撃事態・武力攻撃予測事態・周辺事態があったのだが、それらとの相違はどこにあるのかもよくわからない。

そこで、各法案からそれぞれの事態の定義を抜き出して比較してみたい。なお法案の原文は、朝日新聞(2015年5月12日)に掲載されたものに基づく。

(1)武力攻撃事態法
①武力攻撃事態(元からあったもの)
武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態

②武力攻撃予測事態(元からあったもの)
武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態

③存立危機事態(今回、追加されたもの
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

(2)重要影響事態法
④重要影響事態(今回、追加されたもの
そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態

(3)国際平和支援法
⑤国際平和共同対処事態(今回、追加されたもの
国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの

(1)武力事態法に規定される3つの事態が、日本の平和と安全に直接関連する事態である。
①武力攻撃事態は、日本が攻撃を受けた場合、②武力攻撃予測事態は、①になる危険性が高い場合、③存立危機事態は、日本の同盟国などが攻撃され、それが日本の平和に密接に関連する場合を指す。
③は、安倍総理の説明によれば「ペルシャ湾に機雷がまかれた場合」ということだが、公明党と野党は、この事例は認められないと反対している。ここではとりあえず次に進みたい。

(2)重要影響事態法は、簡単に言えば日本の平和と安全が脅かされるかもしれない事態である。④重要影響事態は、放置すると日本が攻撃される可能性が高い場合、ということになっている。周辺事態法がもとになっていて、地域の限定が外された。

それぞれの概念と日本の対応を粗く整理すればこんな感じだろう。上に行くほど日本にとって烈度が高いということになる。

①武力攻撃事態 「日本が攻撃された

②武力攻撃予測事態 「日本が攻撃される危険性が高い

③存立危機事態 「日本の同盟国などが攻撃された

④重要影響事態 「外国で戦争などが発生し日本も巻き込まれるかもしれない

そうはいっても、③存立危機事態と、④重要影響事態の相違はどうしてもわかりづらい。法案を読むと、適用の対象事態は、実質上の違いがないと思える。結局は最大の違いは、どちらの事態であると認定するかによって、自衛隊の活動内容が異なるということではないか。

③存立危機事態であるとした場合、集団的自衛権に基づいて自衛隊が「武力の行使」を含めた対応を行うことになる。
④重要影響事態であるとした場合自衛隊の活動は、米軍などの後方支援や船舶検査等を、「現に戦闘行為が行われていない地域」で実施することに限定される。ただし撃墜された米軍パイロットの捜索救助は戦闘地域でもできる。

それから④重要影響事態と、⑤国際平和共同対処事態の違いも分かりづらい。しかし法律の文面を読んでみると前者は前述のとおり周辺事態法が下地になっていて、後者はテロ対策特措法が下地となっている。

下地となった法律の実際の活動のイメージは、周辺事態法が北朝鮮有事などであり、テロ対策特措法がアフガニスタン戦争だ。つまり④重要影響事態は、北朝鮮のように日本に直接、攻撃がなされる危険性があるような事態、⑤国際平和共同対処事態は、アフガニスタンのような国際的な重要事態だが日本に直接攻撃が来ることはなさそうな事態ということだ。

こう考えると、今回の重要な安全保障法制の中でも特にしっかりみなければならないのは、③存立危機事態と④重要影響事態の区別で、政府がそこをどう判断するのかということの基準が、とても大切だということだ。これから国会で議論が行われるが、ここをみていくと面白いだろう。

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執筆担当:研究員A
<プロフィール>都内某大学研究所所属の研究員。国際政治研究を専門としていますが、最近はISの動向を中心にテロ情報を眺める毎日。情報を集めながら論文にはならないネタを色々とつぶやいていきます。更新は不定期なので、何か関心事を問い合わせ頂ければ次回投稿にしてみますのでお待ちしてます。

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