• トップページ
  • 事業内容
  • サービス紹介
  • 実績
  • 会社概要
  • パートナー募集

研究員の呟き

研究員の呟き

災害時に社員の積極的な協力を確保するには2014/10/04  読むための所要時間:約 5分21秒

fireman-100722_1280

―企業に求められる準備のポイント―
首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告では、30年以内に70%の確率で発生するM7クラスの地震が想定されており、人的被害(想定死者数)は最大で23,000人に上るとされています。また、インフラ被害も膨大であり、例えば電力については、発災直後に都区部の約5割が停電し、供給能力が5割程度に落ちて1週間以上不安定な状況が続くとされております。

甚大な被害が想定される中、国や自治体による対策が進められていますが、同時に、特にある程度の従業員を抱える企業に対しても、対策のために多くの期待が寄せられています。一例を挙げれば、最大で650万人に上ると見込まれる帰宅困難者に対応するため、発災後に社員を収容して帰宅行動を抑制することや、部外者を社屋に受け入れたり、一時避難場所を提供することがあります。
この前提として、企業には数日間に渡ると考えられる社員の社内待機の準備と社外への支援に従事する準備が必要となります。言い換えれば、災害対応(単なる待機者を含めて)にあたる自社社員を社屋内に相当数、確保することが企業には必要となります。

指摘するまでもなく社員自身が被災者であり、また企業としては事業継続に優先的に資源を振り分ける必要が大きいです。実際に事業継続担当として必要な人員を事前に指定しておく事業継続計画(BCP)の策定も進められてもいます。これらの対応にあたり、待機や対応業務の命令を出して社員に強制的に従事させることも労働条件等を満たせば可能ではあります。

しかし、従業員には自主的に協力してもらった方が、万全ではない形で数日を過ごすことや、その後の中長期の会社の業務継続と発展を勘案すれば望ましいでしょう。それでは、一体どうすれば、一般に帰宅したがる社員に対応行動に従事することを促せるのでしょうか。実は、この裏返しの問いは「そもそもなぜ、社員は待機行動をとらないのであろうか」というものがあるのです。この問いを基本に、社員の待機行動を抑制する要因と、それを踏まえた対策立案のポイントについて、社員の意識、社員の状況、それぞれについて2点を例示しましょう。

〇業務とは考えていない
緊急対応、とりわけ場合によっては社屋に泊まり込んで行う対応は、自身の仕事とは考えていない場合があります。とりわけ若い世代には多いと推察されましょう。
⇒平常時から、社内の広報誌、朝礼や部会等で情宣を行い、意識付けを行うとともに、防災訓練の実施、またBCPにもあるように要員を指定し、業務命令を下す体制を整えることが望ましいです。

〇そもそも会社と仕事に関心が薄い。
会社などどうでも良いと思っている場合です。いわゆる愛社精神とは無縁で、仕事は金銭を得る手段と割り切っているケースです。
⇒対策としては業務命令があります。ただし、非常時には一般に人々の連帯意識が向上することも一般に知られています。

〇家族の安否や自宅の状況が不明
こうした状況下では、社員は当然、帰宅を強く望むことになります。逆に家族と自宅の無事が確認されれば会社に留まることを選択する社員が多いことがアンケート等の結果、明らかにされています。
⇒発災時に、家族・自宅の安否確認を可能な準備をすることを社員に周知徹底しておくことが求められます。電話会社の災害伝言ダイヤル、伝言板を利用する方法を案内しておくことなどがあります。

〇自宅が徒歩圏である
会社から20km圏内が概ね、徒歩帰宅が可能な限界点とされています。この範囲内、特に社屋と極近い場合には、帰宅行動を採りたいと思うのも人情でしょう。
⇒こうしたケースでは、社内の負荷を減らすためにも(トイレや飲料水等)徒歩帰宅の方が望ましい場合があります。このため、徒歩帰宅の準備を周知しておくとともに、出社の要件を設定しておくこことが必要となります。具体的には、安全靴や携行食、飲料水等であり、このための帰宅困難者簡易セットも市販されています。

以上、いくつかのケースを例示しましたが、いずれにしても社員の状況(住所、家族構成等)を踏まえて、事前に計画・準備を行っておくことが必要となります。一般に日本人は会社への帰属意識や同調圧力への受容度が高く、比較的要員確保は容易です。また、非常時には一般に人々の連帯意識が向上する(災害ユートピア)ことも一般に知られています。なお、派遣社員等、正規の直接雇用ではない社員については、派遣元等と綿密な打ち合わせが必要となることを付記しておきます。

---------------------------------
執筆担当:研究員B
<プロフィール>危機管理を専門とするコンサルタントとして、民間企業に対するアドバイザリーやコンサルティングを手掛ける傍ら、官公庁の委託調査や研究機関との共同研究を行っています。これまでに重要施設の警備、災害発生時の対処計画等の計画策定や震災対策、国内外被災地の状況調査に従事してきました。これらの経験を活かして火力支援社では、地方議員の方を対象にした調査・アドバイザリも行っています。

Social フェイスブック

Archive 実績紹介

C.W.ニコル・アファンの森財団様

公式ウェブサイト

一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団様 公式ウェブサイト
他の実績をみる