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研究員の呟き

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イスラム国(IS)をかんがえてみる(1):我々はどこからみているのか?2015/12/22  読むための所要時間:約 4分23秒

 

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今回、「イスラム国とは何なのか? 」を説明して欲しいというオーダーをもらった。

これは非常な難問だ。まずは色々な説明を整理してみたい。

ネット上にはイスラム国の正体として、欧米石油メジャーやイスラエル(ユダヤ)の生み出したもの、実はアメリカ(CIA)の手先、サウジアラビアの出先機関、果てはロシアの諜報機関によるものといった類のものも溢れかえっている。玉石混交なのだが、中には良く考え付くものだと感心するほど話としては面白いものもある。

ただ、話としては面白くても、それを説明する根拠に欠ける。なにしろ明確な根拠がないことこそが、むしろ陰謀の証明になるというのがこの手の陰謀論の論理なので、それらを扱い始めると何も話が進まない。だからここではそれらは横に置いておき、イスラム国というものが生まれる構造的な、説明可能な理由を整理してみたい。

人によっては中東の歴史を紐解く。オスマン帝国の解体、分かり易い例ではサイクス・ピコ協定によって欧米が引いた現在の国境線を無くそうとする行為として、またはイスラム帝国の復興として説明されたりする。インテリに多い説明であり、学者や言論人に、こういう説明をする人を見かけることがあるだろう。

別の人は、宗教の観点から説明するかもしれない。イスラム教の創始時代、その時代に戻ろうとする宗教復興の動きとして、或いは「真の」イスラム国家の樹立としても説明される。イスラム国の戦闘員などによる自爆攻撃を躊躇わない戦術に表れる生死を越えたなにかの追求宗教的情熱に答えを求めるのは分かりやすいものだ。(イスラムへの)差別主義者と非難される人々は、よくこういう説明をする。分かり易い例はアメリカ大統領候補のドナルド・トランプだろうか。

あるいは一昔前に流行った感のある、欧米の帝国主義への抵抗として解釈する人もいるだろう。十字軍との戦いといった言い方がされることもある。国際的な不平等と抑圧の中で、立ちあがった集団であるというものだ。日本ではとくに左翼的な傾向のある言論人の一部に、こういった説明を好む人がいるようだ。ノスタルジーとでもいおうか、こういう説明の際には、共感的とまでいわなくとも同情的なニュアンスがただよう。

もっとも虚無的な解釈として、イスラムの名を騙る単なる犯罪利益集団であるというものもある。莫大な石油収入を得て支配者・層として君臨することで得られる快楽こそが原動力だというものだ。奴隷制の復活を含めて、イスラム国は巨大な犯罪集団に過ぎないというものだ。イスラム国に批判的なイスラム教徒はこういう説明を好むように思う。「イスラム国はイスラム的ではない」というわけだ。

どれももっともな説明だ。おそらくこれと言って間違っているものはないのだろう。しかし、結局イスラム国とは何なのか、良く分からないのだ。

ただし、イスラム国とは何なのか?という問いかけへの回答が難しいということを理解するのは簡単だ。たとえば日本とは何なのか?を問われたと考えてみて欲しい。どう説明するかわからないが、たぶんどういう風に説明してもよいものだろう。

だから、イスラム国とは何なのか?を問うのは知的取り組みとしては面白いのだが、結局は一人一人がどう解釈するのか、というよりむしろ、一人一人がどういう観点でイスラム国をみるのか(みているのか)という問題に過ぎないとさえいえる。

だからここでは、少しだけ問いを変えて、現代社会においてイスラム国の何が問題なのか?で考えてみたい。もっともこうして考えていくことで、結果的にイスラム国とはなにか?という問いにも一つの説明をくわえることになる。

(続く)

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執筆担当:研究員A
<プロフィール>都内某大学研究所所属の研究員。国際政治研究を専門としていますが、最近はISの動向を中心にテロ情報を眺める毎日。情報を集めながら論文にはならないネタを色々とつぶやいていきます。更新は不定期なので、何か関心事を問い合わせ頂ければ次回投稿にしてみますのでお待ちしてます。

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