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研究員の呟き

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イスラム国(IS)をかんがえてみる(2):国際社会の鬼子2015/12/23  読むための所要時間:約 4分20秒



現代社会においてイスラム国の何が問題なのか?

我々が生きるこの世界を形作るのは、国際社会と同義だ。国際社会とは、読んで字のごとく国と国との「際」に構成される社会であって、その構成要素は、あくまで国である。そしてこの社会はある共有された価値に基づいたシステムを形作っている。

その価値の大きなものは、「妥協できない絶対的価値を巡る争いをしない」というものだ。妥協できない絶対的価値の際たるものは、いうまでもなく宗教だが、かつては王権もそうだった。「王様の言うことは絶対」ということで、絶対王政のもとにある君主国同士で戦争を行った。

王権と宗教の正統性が絡みあって戦いに明け暮れたのがヨーロッパ中世の時代であり、そこで展開されたのは人を人とも思わぬ残虐な行為と、結果としてのヨーロッパの荒廃だった。

この経験を踏まえて生み出されたのが主権国家システムだ。それぞれの国の領域内で何をしようと、それは国内のことで他の国には関係ないこと、というものだ。各国がどんな宗教を信じようと、他の国はそれに関与しない。押しつけもしないし押し付けられもしない。現代ではこれに加えて、絶対的な君主という存在をなくし、王や皇帝という「個人による戦争」ができないようにもなっている。

つまり現代世界の核の一つは、妥協できない絶対的価値の相違に基づく争いを止めるシステムを構築したことにある。仮に気に食わない国があるとしても、そこに対する先制攻撃も内政干渉も、国際法違反であるということになっているのだ(現実はどうあれ!)。

そしてこれを破壊するものには、集団で制裁を加えるというのが集団安全保障体制であり、その明確なシステムが国際連合ということになる(ほかにも地域の枠組み、テーマごとの複数国での枠組みなどいろいろある)。たとえば国連で喧嘩し合う各国の代表の姿を想像してほしい。そこには敵対する国同士であっても、あるいはならず者国家と呼ばれようと、とにかくシステムの中に世界の国がすべて入っているのだ。そしてそこでは、各国によって日々話し合いが行われ、影響力を行使し合い、そしてだまし合いを行っている。

たとえば最近日本は、韓国(と北朝鮮)がしつこく国連のさまざまな会合に提起してくる慰安婦問題に反論し、韓国の主張する「謝罪と補償がまったくない」などの内容に正当性がないことを繰り返し表明している。これによって、韓国の主張が各国に認められ、国際社会の中で正当性を確立することが無いように駆け引きを行っているのだ。(ちなみに最近はこの問題をやり過ぎて、毎度付き合わされる各国はいい加減にしてくれとうんざりしていると聞く。)

南沙諸島をめぐる中国と周辺国およびアメリカ、シリアでのロシア機の撃墜事件をめぐるロシアとトルコ、あるいはイラク戦争開戦直前のイラクとアメリカのように、一触即発の危機的事態にあっても、とりあえず国際的な場で話し合いがもたれる。

そのチャンネルの一つとして、世界のあらゆる国が加盟する国連がある。どれほど仲の悪い国であろうと皆が共通のシステムの下で、話し合いを行う場を常にもち、そしてもし違反した場合、制裁を加えられる恐れがあることを、各国が(いちおう)共有している国際システムが機能しているということだ。

さて、ここで問い―イスラム国の何が問題なのか―に戻ってみると、問題が少しクリアになるだろう。つまりこういうことだ。イスラム国はいかなる国際システムにも入っておらず、そして入るつもりもなく、それどころかそれに挑戦しているのだ。そしてイスラム国との話し合いの余地は事実上、まったくない。

長くなってきたので続きは次回にしよう。

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執筆担当:研究員A
<プロフィール>都内某大学研究所所属の研究員。国際政治研究を専門としていますが、最近はISの動向を中心にテロ情報を眺める毎日。情報を集めながら論文にはならないネタを色々とつぶやいていきます。更新は不定期なので、何か関心事を問い合わせ頂ければ次回投稿にしてみますのでお待ちしてます。

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