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研究員の呟き

研究員の呟き

安全保障マニアの黄昏2015/11/21  読むための所要時間:約 3分27秒




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平和・安全保障法制が通過して数ヶ月が経過した。SEALDsの活動が注目を集め、外交安全保障が政治のメインテーマだった時期は過ぎ去った感が強い。実際のところ、安倍総理および与党の焦点も経済にシフトしている。来たる選挙を見据えて再び経済テーマでという実に分かり易い戦術だが、内閣支持率の持ち直しをみても一定の効果はあるのだろう。

安保法制の審議の過程では、日本の安全保障体制の強化を唱える安保マニアの姿も多く見られた。床屋談義でも、グレーゾーン、抑止力、集団的自衛権、武器使用、武力行使等々、安保の専門用語が飛び交い、そうした用語は連日のように新聞の見出しを飾った。オウム返しのように繰り返されたそれらの個々のテーマは、改善の余地ありとはいえ安保法制の成立によって一定の決着をみせ、「問題点」はクリアされたかのようになっている。この空気感の中で、焦点が経済に移っている。安全保障が政治場裏のメインのテーマでなくなる中、焦点が経済に移行した今の風潮は、ようするに安保は終わった、次は経済だということだ。

しかし安保法制は、実際の事態に備えるための基本的な体制を、今取り得る範囲の中で決めたということでしかない。現在、緊張関係にある南シナ海や尖閣諸島、あるいはイスラム国をはじめとする国際安全保障の課題が消えたものでもない。安保法は、それに基づいて我々が何でき、また何をすべきなのかを考える、そして必要な安保法制の改善に向けて議論を続けるためのいわば素材であるはずである。成立した法案をベースに議論を続けなければ、安保マニアが叫んでいた安保体制強化には片手落ちなのだ。

つまり、「安保は終わったから経済」ではなく、常に安保の具体的な議論を行うベース・ラインが、安保法制なのだ。それにもかかわらず安保の話は、フランスでの虐殺の発生と報復攻撃の展開、南シナ海での米中対立の先鋭化を受けても全く盛り上がらないようにみえる。安保法制の過程で多く見られた安保マニアはどこにいってしまったのだろうか。

具体的な議論をするためには、法案を読み込むなど勉強をしなければならないのでハードルはあがる。そこまではしたくない、あるいはできない安保マニアは、再び「憲法を変えなければならない」という話に帰結する。それが不要だとは思わないが、この神学論争、或いは2015年の安保法制の過程でも現時点で不可能事だと明らかになった話をすることは、実態としては議論からの逃げでしかなく、真剣に安保を考えたくない者が安保法制を振り返って黄昏れているに過ぎないと思うのだがどうだろうか。

安全保障を真剣に考えるのならば、中国やイスラム国、そしてオリンピックやサミットといった国際行事を控えた日本でのテロ対策のあり様について考えなければならないだろう。

 


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執筆担当:研究員A
<プロフィール>都内某大学研究所所属の研究員。国際政治研究を専門としていますが、最近はISの動向を中心にテロ情報を眺める毎日。情報を集めながら論文にはならないネタを色々とつぶやいていきます。更新は不定期なので、何か関心事を問い合わせ頂ければ次回投稿にしてみますのでお待ちしてます。

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