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2014年前半期、地方議員の不祥事が頻繁に報道されています。中でも衝撃的だったのは、国際的に配信され、その後辞任に至った野々村竜太郎（元兵庫県議会議員）でしょう。

同議員の不祥事は、不透明な会計処理ではあったものの、少なくとも現時点では刑事罰を伴う様な汚職・背任とはなっていません。ある意味ではありがちとも言える不祥事の一事例に過ぎなかったものを、一躍全世界に広めたのが7月1日の記者会見での号泣と絶叫であったと言っても過言ではありません。

地方議員に限らず、危機管理において世間の注目を集める不祥事発生時の記者会見は、危機管理広報の柱となるものです。この観点から理想的なのが、4月の小保方晴子氏の記者会見です。当事者の天性に依拠する部分もあるとはいえ、記者会見ではプラス面もマイナス面も、相当程度は事前の準備に依拠するものです。一言で言えば「野々村氏のような事態を招かないためにはどう準備すれば良いか」ということです。想定問答を考えるという点は当然としても、様々な仕掛けもまた重要です。小保方氏の記者会見は理想的とも言えるため、そのポイントをいくつか要点を整理します。

（１）会場選定

〇ポイント：記者をイライラさせない
…記者の語調や態度にも差が出るため、ゆったりした場所・雰囲気と快適な空調は会見場の要件となります。

〇ポイント：貧相に見せない
…当事者の服装、化粧、髪型等はもちろんながら、会場がパイプ机・椅子等の場合、視聴者にみすぼらしいイメージを与え、叩かれやすくなります。

⇒小保方氏の事例では、ホテルのパーティー会場を借り切り、また再三指摘されているように、当人もTPOに相応しい化粧、服装をとっています。

（２）会場セッティング

〇ポイント：導線を分ける
…どれだけ対応をしても記者はさらに聞き出そうとし、ぶら下がりや、ひどい場合は進行妨害をして当事者の過激な反応を引き出そうとします。このため、記者と当事者の導線を分けることが鉄則となります。

〇ポイント：脚部を見せない
…足の動きに不安や怒りなどの感情が自覚なく表れやすいため、当事者が強いストレスに晒される記者会見においては、見着座した会見者の足を見せないことが肝要です。

⇒ぶら下がりをさせないことを徹底するとともに、会見者の机はクロスで隠され、足の動揺は見て取れなくなっています。

（３）登壇者

〇ポイント：人数を絞る＆司会は当事者以外
…やたらと多くの会見者がいても、混乱する上にそれぞれの受け答えで齟齬も生じる危険性が高まるため、登壇者は少ない方が一般的に良いでしょう。

〇ポイント：役割分担を明確にする
…当事者として記者の質問に答える者は、事前に相互の役割分担を明確にするべきです。

〇ポイント：本人には言い訳に聞こえる（否定的印象を与える）回答を行わせない。
…記者会見は、叩こうという趣旨の記者が多数いることを前提に、切り取られて悪印象を与える映像を残すことを極力避けるべきです。

⇒3名（当事者、弁護士、司会）であり、役割分担はおそらく以下であったと思われます。

・弁護士：「法的事項、今後の対応、理研との関係に関すること」等

・当人：「研究及び内容に関すること」

・司会：「割り振りと回答先送り、拒否」

「憎まれ役は弁護士」を原則に、徹底して当人に否定的な言説を述べさせていないことは注目すべき点でしょう。

この他にも多くの要素がありますが、以上のように小保方氏の記者会見は、会場選定から当日の役割分担まで、当人の天性に帰するに留まらない周到な記者会見対応がなされていたことで、結果的に多くの同情を獲得したと総括できます。

野々村議員の事例は、失敗例として観ても相当に特殊ですが、記者会見での対応を誤った場合どうなるのかを、如実に私たちに示しているのではないでしょうか。

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執筆担当：研究員B
＜プロフィール＞危機管理を専門とするコンサルタントとして、民間企業に対するアドバイザリーやコンサルティングを手掛ける傍ら、官公庁の委託調査や研究機関との共同研究を行っています。これまでに重要施設の警備、災害発生時の対処計画等の計画策定や震災対策、国内外被災地の状況調査に従事してきました。これらの経験を活かして火力支援社では、地方議員の方を対象にした調査・アドバイザリも行っています。